モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。
今回お届けするのは、
ネコのシャンプー当日に利用する、宅配ピザのホームページの一部。
作り手の“こだわり”だけで、おなか一杯になりそうです。
【Before】
<1>本格的なイタリアンレシピにこだわった「ナ○○○窯」のピザは、外側がパリ
ッとして中がモッチリ。
<2>素材もこだわり、手作りのおいしさを宅配・デリバリーすることを大切にして
おります。
<3>多彩なソースでバラエティ豊かなピザメニューを取り揃え、こだわりの伸びに
くいパスタは、ナ○○○窯のオリジナルです。
<4>できたてのナポリピザをご家庭まで心を込めてデリバリー・宅配いたします。
【推敲のポイント】
「こだわり」という抽象的な表現が3回も登場。
それ以外にも、改良すべきポイントがたくさんありそうです。
行ごとに確認していきます。
<1>
「本格的なイタリアンレシピにこだわった~」
こう書かれても、それ以上の具体的な情報に乏しい状態。
思い切って「省く」手もありそうです。
<2>
「素材もこだわり、~」
省略されている主語を補ってみると、
(私たちは)「素材もこだわり~」
↓
(私たちは)「素材にもこだわり~」
と、この場合「に」を補うのが普通ですね。
「宅配・デリバリー」
宅配、デリバリーは、ほぼ同じ意味。
重ねて使うことに、果たして意味はあるでしょうか。
ごくシンプルに「お届け」が親切でわかりやすい表現では?
<3>
書き出しが「ピザ」の話題で、後半になるとパスタに“急変”。
読み手に負担をかける、理解しづらい文章の典型例です。
<4>
「ナポリピザ」
今までにない表現、それも固有名詞が最終行で初登場。
いかにも唐突な印象です。
「宅配・デリバリー」
2度目の登場、しかも「デリバリー・宅配」と語順が変わっています。
重複に加え、不統一も気になるところ。
以上のように、かなりの重症と見ました。
例によって、まずは伝えたい内容を整理してみます。
<1>ピザは外側パリッ、中がモッチリ
<2>素材を厳しく選び、手作りのおいしさをお届け
<3>ピザは多彩なソースでバラエティも豊か
パスタは伸びにくく、当店のオリジナル
<4>できたてのピザを、ご家庭まで心を込めてお届け
ここまでシンプルにしてみると、
「ムダ」や「無理」がはっきり浮かびあがります。
ここで推敲の方針を明確にしていきましょう。
・「デリバリー」(お届け)が2度も出てくる
→説明の順序を考え、文章の最後にまとめます。
・パスタの説明が中途半端
→説明が「伸びにくい」「オリジナル」のみなら、思い切って削除。
・原文にある「こだわり」の重複使用
→これは避けます。
いよいよ文章を組み立ててみます。
・ピザの「バラエティ豊か」には、「23種類」を加えて具体的に
・もっともチャーミングな「外側パリッ、中がモッチリ」を強調
・素材=「選び抜く」という表現で
【After】
選び抜いた素材の力で、外側パリッ~中はモッチリ!
「ナ○○○窯」の手作りピザは、多彩なソースが生み出す23種のバラエティ。
本格的なイタリアンレシピの味わいを、心を込めてお届けします。
お読みいただいた感じは、いかがでしょうか。
ひと通りの要素を盛り込みつつ、極力スリムにしてみました。
とはいえ、
素材にしても、ソースにしても、手作りにしても、お届けにしても、
本当に読み手が知りたい、詳細な情報がないことに改めて気づかされます。
【今後へのメモ】
「本格的」「心を込めて」「こだわり」「多彩な」
など、よく使われる便利な言葉に、
実は、しっかり説明する力がないことがわかります。
それにしても、
ものの魅力を言葉で説明することは、難しいですね。
伝えるべき要素は、どこにあるのか――。
それを読み手の視点で掘り起こすことが、とても重要なのです。
ちなみに、
家内も私も「ナポリの窯」のピザは“お気に入り”です!
ありがとうございました。

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