モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。
今回お届けするのは、
すっかりおなじみの鉄道モノ。
「座席のシートに~」という表現にかなりの“違和感”が……。
【Before】
座席のシート切りは犯罪です!
座席を切る行為は、刑法第261条等により罰せられます。
目撃したり、発見した場合は係員にお知らせ下さい。
(以下略)
【推敲のポイント】
違和感の原因は、
「座席とシート、同じ意味では?」
という疑問。
「座席」は英語で「シート」。
(シルバーシート、リクライニングシートなどでおなじみですね)
すなわちこの場合、
「座席のシート切り~」=「シートのシート切り~」
と、明らかな重複ではないかと感じたのです。
そこで、さっそく確認してみると――。
シート【seat】 =席。座席
シート【sheet】=薄い紙などの1枚。日よけ・雨よけなどに使う大きな防水布
(大辞泉より)
なるほど、
シートは「座面の布地」(sheet)
(=クッキングシート、レジャーシートと同じ用法です)
という意味で使われているようです。
なんと、まぎらわしい!
2行目で「座席を切る行為は、~」と書いているのですから、
1行目もそれに合わせて、
「座席切りは犯罪です!」で、よいのかもしれません。
(ちなみに刑法261条は、器物損壊罪だそうです)
【After】
シート切りは犯罪です!
座席を切る行為は、刑法第261条等により罰せられます。
目撃、発見された場合は係員にお知らせください。
先に考えていた「座席切りは犯罪です!」とすると、
最初の「漢字×3」が重く感じます。
そこで、大文字で強調する見出しでは「シート切り」、
具体的な説明をする本文では「座席を切る行為」と、
使い分けてみることにしました。
ある種の「玉虫色の決着」なのですが、
この語順であれば、最初の「シート」を、
「座席」「座面の布地」のどちらに解釈してもOK。
しかも、言葉の重複感を解消できる――と、
とても都合よく(!)考えた解決策です。
【今後へのメモ】
ちなみに「目撃したり~」のところで登場する「~たり」は、
「~たり、~たり」と重ねて使うのがルール。
このケースでは、
「目撃されたり、発見されたりした場合は係員に~」
と、長くなってしまいます。
(「される」は「する」の尊敬表現)
そこで、
「目撃、発見された場合は係員に~」
と、コンパクトにまとめました。
ずいぶんスッキリしたと思いますが、いかがでしょう。
ありがとうございました!

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