モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。
今回お届けするのは、
環境、食の安全をテーマに活動されているグループの折り込みチラシの一節。
活動の趣旨、方向にはおおいに共感するのですが、
偶然にも「わかりやすい例文」を発見してしまいました。
【Before】
○○○○○では独自の自主基準を定めています。
生産者はその自主基準に基づき、情報を公開。
組合員は生産現場の製造環境や製造工程を確認し、
自主基準に沿って製造されているかチェックすることができます。
【推敲のポイント】
“違和感センサー”の点滅は、最初の行から。
「独自の自主基準」という言い方では、明らかに意味がダブってしまいます。
独自=他とは関係なく自分ひとりであること。また、そのさま。
自主=他からの干渉や保護を受けず、独立して事を行うこと。
(大辞泉より)
ごく一般的な見方として、
「独自」ではない「自主基準」
「自主」ではない「独自基準」は“ほぼ”あり得ないと考えてよいでしょう。
ここで“ほぼ”としたのは、
「他グループと共同で自主基準を設ける」
「外部でつくられたものを独自基準として採用する」
などの可能性が残ると考えたからです。
次に、おなじみの重複をチェックしてみます。
・「自主基準」=3回
・「製造」=3回
特に後者には「生産」という言葉もからんできますので、要整理です。
3行目、
「生産現場の製造環境や製造工程を~」には、
大いに推敲の余地あり――ですね。
原文では“なぜか”不明確だった、
自主基準が「何を定めた基準なのか」を補いながら、
推敲を進めてみましょう。
文脈から、
基準は「加工食品の製造」についてのものと考えてみます。
【After】
○○○○○では加工食品の製造について独自の基準を設けています。
生産者はその規定に基づいて情報を公開。
組合員は生産現場の環境や製造工程を調査し、
基準が守られているかどうかを確認できます。
【今後へのメモ】
懸案の「基準」については、以下のとおり言い換えてみました。
・初出 =独自の基準(自主~は省きました)
・2度目=その規定(「基準」と「基づき」の重複を回避)
・3度目=基準
いずれも音読した際の響き、流れ、重複の回避などを考慮したものです。
同じく懸案の「生産現場の~」以下についても、
「生産現場の環境や製造工程」とし、だいぶスッキリしたと思います。
考えてみると「製造環境」という言い方は、あまり使われません。
念のため、最後に……。
本稿は「チラシを配布された団体」の活動等に異を唱えるものではありません。
(私自身、同じ方向を目指す者の一人です)
ありがとうございました!

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