モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。
今回は家電量販店の男子用トイレで採取した物件です。
間違いではないのですが、やや微妙な印象。
皆さんは、どのように感じられるでしょうか――。
【Before】
大事なお客様に大切なお知らせ。
一歩前進に協力願います。
女性の皆さまのために“念のため”補足しておきます。
「一歩前進」は、
「小便器に近づいて!」の意。
多くの人が使うトイレを気持ち良く――という趣旨です。
【推敲のポイント】
さて、
この注意書きの写真を撮ろうと考えたのは、
「大事」と「大切」が“逆”ではないか?
と、瞬時に感じたからです。
帰宅後、
例によって「大辞泉」さんに教えを乞うことにしました。
(一部を抜粋)
【大切】
1.もっとも必要であり、重んじられるさま。重要であるさま。
「―な条件」「―な書類」
2.丁寧に扱って、大事にするさま。
「本を―にする」「命を―にする」
【大事】
1.価値あるものとして、大切に扱うさま。
「―な品」「親を―にする」「どうぞ、お―に」
2.重要で欠くことのできないさま。ある物事の存否にかかわるさま。
「―な用を忘れていた」「今が―な時期だ」
――ほとんど「差」は見られないようです。
【用法=大切・大事】 の項には、こんな記載があります。
「おからだを大切に」
「どうぞ、お大事に」などは、ともに日常語ではあるが、
「大事」のほうがよりくだけた感じがある。
なるほど、手がかりのひとつにはなりそうですが、
微妙なニュアンスの問題を解明するには至りません。
さらに、語源について調べてみました。
「大事」は、もともと「重大な事柄」「重大な事件」。
「大切」は、「大いに切迫していること」すなわち「さし迫る」という
ニュアンスで使われていたようです。
ここまでを総合すると、
大事=マテリアル(より物質寄り)
大切=メンタル(より感情寄り)
と、言うことができるかもしれません。
【Before】
大事なお客様に大切なお知らせ。
一歩前進に協力願います。
↓
【After】
大切なお客様に大事なお知らせ。
一歩前進にご協力願います。
【今後へのメモ】
結局、ひっくり返してみることにしました。
やはりこのほうが、しっくりくると思いますが、
皆さんは、どのように感じられるでしょうか?
日本語は、難しいですね!
ありがとうございました。

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