推敲百話【23】「“大事”と“大切”の微妙な関係」の巻

モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。

今回は家電量販店の男子用トイレで採取した物件です。

間違いではないのですが、やや微妙な印象。

皆さんは、どのように感じられるでしょうか――。

失礼ながら“勝手に”推敲いたします。
男性にはおなじみの注意書きです

【Before】

大事なお客様に大切なお知らせ。

一歩前進に協力願います。

 

女性の皆さまのために“念のため”補足しておきます。

「一歩前進」は、

「小便器に近づいて!」の意。

多くの人が使うトイレを気持ち良く――という趣旨です。

 

【推敲のポイント】

さて、

この注意書きの写真を撮ろうと考えたのは、

「大事」と「大切」が“逆”ではないか?

と、瞬時に感じたからです。

 

帰宅後、

例によって「大辞泉」さんに教えを乞うことにしました。

(一部を抜粋)

【大切】

1.もっとも必要であり、重んじられるさま。重要であるさま。

「―な条件」「―な書類」

2.丁寧に扱って、大事にするさま。

「本を―にする」「命を―にする」

 

【大事】

1.価値あるものとして、大切に扱うさま。

「―な品」「親を―にする」「どうぞ、お―に」

2.重要で欠くことのできないさま。ある物事の存否にかかわるさま。

「―な用を忘れていた」「今が―な時期だ」

 

――ほとんど「差」は見られないようです。

 

【用法=大切・大事】 の項には、こんな記載があります。

「おからだを大切に」

「どうぞ、お大事に」などは、ともに日常語ではあるが、

「大事」のほうがよりくだけた感じがある。

 

なるほど、手がかりのひとつにはなりそうですが、

微妙なニュアンスの問題を解明するには至りません。

 

さらに、語源について調べてみました。

 

「大事」は、もともと「重大な事柄」「重大な事件」。

「大切」は、「大いに切迫していること」すなわち「さし迫る」という

ニュアンスで使われていたようです。

 

ここまでを総合すると、

大事=マテリアル(より物質寄り)

大切=メンタル(より感情寄り)

と、言うことができるかもしれません。

 

【Before】

大事なお客様に大切なお知らせ。

一歩前進に協力願います。

 ↓

【After】

大切なお客様に大事なお知らせ。

一歩前進にご協力願います。

 

【今後へのメモ】

結局、ひっくり返してみることにしました。

やはりこのほうが、しっくりくると思いますが、

皆さんは、どのように感じられるでしょうか?

 

日本語は、難しいですね!

ありがとうございました。


>>推敲百話【22】「たばこはそんなに悪いの?」の巻へ

>>推敲百話【24】「桜満開に咲く」の巻へ

◆次回セミナー

公開講座のご案内は、こちらにございます! 

◆赤羽博之のFacebookページへ

https://www.facebook.com/hiroyuki.akabane

◆著書のご紹介

すぐできる!伝わる文章の書き方 赤羽博之・著

日本能率協会マネジメントセンター・刊 1,300円+税

講演・研修、文章講座の

ご相談、ご依頼などは…

◆著書のご紹介

『すぐできる!伝わる文章の書き方』赤羽博之・著(日本能率協会マネジメントセンター)

すぐできる!

伝わる文章の書き方

赤羽博之・著

日本能率協会マネジメントセンター

1,300円+税

◆最新情報は

facebookで発信中

◆最新のブログ記事

大推敲!勝手にビフォーアフター

推敲百話【43】あなたの文章が“相手にされない”本当の理由
>> 続きを読む

推敲百話【42】「あなたの文章が読まれない意外な理由」の巻
>> 続きを読む

推敲百話【41】「荷物と修飾語は軽いほうがいい」の巻
>> 続きを読む

推敲百話【40】「澄むと濁るで大違い」の巻
>> 続きを読む

推敲百話【39】「日本語はむずかしい」の巻
>> 続きを読む

推敲百話【38】「環境省が地球温暖化を“推進”する!?」の巻
>> 続きを読む

推敲百話【37】「“温”と“暖”のややこしい関係」の巻
>> 続きを読む

推敲百話【36】「コピペで謝罪広告は危険!」の巻
>> 続きを読む

推敲百話【35】「胸を張って“なすりつける”と言えますか?」の巻
>> 続きを読む

推敲百話【34】「変身するプリンタ用紙」の巻
>> 続きを読む

Copyright by Ko-bunsha GK.

All rights reserved.