モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。
久々更新の今回は投稿物件第5弾のご紹介です。
投稿いただいたのは、青木将幸さん。
淡路島のとある公共施設のエレベーター前で発見した――とのこと。
ありがとうございます。
では、拝見していくことにしましょう!
地球に優しい環境のため
近階移動時の階段利用に
ご協力ください。
【推敲のポイント】
「地球にやさしい」というフレーズが一世を風靡したのは、
1980年代の終盤~90年代の初頭だったと記憶しています。
ブラジルで環境サミットが開かれたのが1992年。
日本という国がバブル経済の酔いから醒め、
各企業に環境対策室なるものが“雨後の筍”のように設けられた頃です。
そもそも地球に生かされている立場の人間が、
「地球にやさしく」するとは?
現在ではおそらくこういう発想、コピーは生まれないでしょう。
やはり「時代の空気」が生み出した言葉なのだと思います。
そして、同時期のこと。
「地球にやさしい」がやや“不遜”な表現だという背景から、
次に出回ったのが、「環境にやさしい」というフレーズでした。
当時は住宅、自動車、家電、小売り、その他ありとあらゆる業界が、
この「地球に~」あるいは、「環境に~」というフレーズを、
あたかも免罪符のように乱用していたのです。
――で、この物件。
「地球に優しい環境のため」って、ずいぶんな言い回しですね!
バブル当時のフレーズを総動員したような風情です。
(スパゲティナポリタンにミートソースをかけた状態?)
しかも、「近階移動時は」と、上から目線でたたみかけられては、
思わず口が“ぽかり”と開いてしまう思いがします。
誰かに何かを丁寧に伝えようとする「姿勢」に欠ける、
バブル期の箱モノに見られるコミュニケーション例ではないでしょうか。
(この施設がいつ造られたのかは不明ですが)
これを読んで、気持ちが前向きになる、
あるいは、良い気分になるということは、なかなか起きないと思います。
そこで、たとえば……
【Before】
地球に優しい環境のため
近階移動時の階段利用に
ご協力ください。
↓
【After】
エレベーターはお客様専用です。
節電と健康維持のため当館職員は
階段を利用します。
で、いかがでしょうか――。
「姿勢」に賛同し、率先して階段を使ってくれる方が増えるかもしれません。
しかし、書くまでもないことかもしれませんね。
【今後へのメモ】
階下の喫茶コーナーのメニューには、
「スパゲティナポリタン・630円(税込)」の文字がありそうな予感がします。
どなたか現地に行かれた際には、情報をお寄せください!
ありがとうございました。

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