推敲百話【26】「地球に優しい環境」の巻

モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。

久々更新の今回は投稿物件第5弾のご紹介です。

投稿いただいたのは、青木将幸さん。

淡路島のとある公共施設のエレベーター前で発見した――とのこと。

ありがとうございます。

では、拝見していくことにしましょう!

失礼ながら“勝手に”推敲いたします。
「地球にやさしい」が万能だった時代もありました…

地球に優しい環境のため

近階移動時の階段利用に

ご協力ください。

 

【推敲のポイント】

「地球にやさしい」というフレーズが一世を風靡したのは、

1980年代の終盤~90年代の初頭だったと記憶しています。

 

ブラジルで環境サミットが開かれたのが1992年。

日本という国がバブル経済の酔いから醒め、

各企業に環境対策室なるものが“雨後の筍”のように設けられた頃です。

 

そもそも地球に生かされている立場の人間が、

「地球にやさしく」するとは?

現在ではおそらくこういう発想、コピーは生まれないでしょう。

やはり「時代の空気」が生み出した言葉なのだと思います。

 

そして、同時期のこと。

「地球にやさしい」がやや“不遜”な表現だという背景から、

次に出回ったのが、「環境にやさしい」というフレーズでした。

 

当時は住宅、自動車、家電、小売り、その他ありとあらゆる業界が、

この「地球に~」あるいは、「環境に~」というフレーズを、

あたかも免罪符のように乱用していたのです。

 

――で、この物件。

「地球に優しい環境のため」って、ずいぶんな言い回しですね!

バブル当時のフレーズを総動員したような風情です。

(スパゲティナポリタンにミートソースをかけた状態?)

 

しかも、「近階移動時は」と、上から目線でたたみかけられては、

思わず口が“ぽかり”と開いてしまう思いがします。

 

誰かに何かを丁寧に伝えようとする「姿勢」に欠ける、

バブル期の箱モノに見られるコミュニケーション例ではないでしょうか。

(この施設がいつ造られたのかは不明ですが)

 

これを読んで、気持ちが前向きになる、

あるいは、良い気分になるということは、なかなか起きないと思います。

そこで、たとえば……

 

【Before】

地球に優しい環境のため

近階移動時の階段利用に

ご協力ください。

【After】

エレベーターはお客様専用です。

節電と健康維持のため当館職員は

階段を利用します。

 

で、いかがでしょうか――。

「姿勢」に賛同し、率先して階段を使ってくれる方が増えるかもしれません。

しかし、書くまでもないことかもしれませんね。

 

【今後へのメモ】

階下の喫茶コーナーのメニューには、

「スパゲティナポリタン・630円(税込)」の文字がありそうな予感がします。

どなたか現地に行かれた際には、情報をお寄せください!

ありがとうございました。


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