推敲百話【28】「スッキリしないN経TEST」の巻

モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。

久々の更新となる今回は、またまた新聞広告の登場です。

昨日、日経を読んでいると、

なんともスッキリしない広告の文面が目に止まりました。

“違和感センサー”が反応した問題箇所とは?

失礼ながら“勝手に”推敲いたします。
よく見ると「見出し」もスッキリしませんね……

ビジネスに関する知識を知恵に活用する

「ビジネス知力」を測る日経TEST。

社員研修の教材や昇進昇格試験として活用することにより、

社員の能力を高め、企業価値を向上することができます。

 

【推敲のポイント】

着眼点は次の2つです。

 

【1】「ビジネス~」で始まる最初の文

・一文の中に情報が詰まりすぎている印象。

・「知恵に活用する」は、やや不自然な表現。

 

【2】「社員研修の~」で始まる文章の後半

・「こと」の重複により、回りくどい印象。

・「企業価値を向上することができる」は誤用。

 

――では、「一宿一飯の恩義」あるN経さんの仕事ではありますが、

心を込めて推敲を進めていきましょう。

 

【1】「ビジネス~」で始まる最初の文

一読して印象に残るのは、情報がぎゅうぎゅうに詰まった感じ。

原因を考えてみましょう。

実は、ひとつの文に複数の“主述の組み合わせ”的な要素があることが、

ぎゅう詰め感の原因です。

(要は、「ビジネス知力」の説明が長すぎるのです!)

つまり、この文で発信しようとしていることを分解してみると――。

 

・ビジネスに関する知識を知恵に活用するのが、「ビジネス知力」。

・その「ビジネス知力」を測るのが、日経TEST。

 

という“2段ロケット”構造になっていることが分かります。

本来なら、ひとつの文はひとつの意味、メッセージを伝えることに

徹したいところ。

これを一気に、一文で読ませてしまおうというところに、

少々無理があるようなのです。

 

同時に、「知恵に活用する」は不自然な表現。

「~知識を知恵として活用する」が、ごく自然な言い回しです。

 

【Before】

ビジネスに関する知識を知恵に活用する

「ビジネス知力」を測る日経TEST。

【After】

日経TESTは、

仕事についての知識を知恵として活用する力、

「ビジネス知力」を判定します。

 

・「ビジネスに関する知識」→「仕事についての知識」

 「ビジネス」の繰り返しを解消。

 「関する」という硬質な表現を和らげました。

・ 全体を「日経TESTはビジネス知力を判定します」という

  シンプルな流れに変更。

 「測る」は「判定」と表現を換えました。

 

……いかがでしょうか。

文字数は増えましたが、全体の風通しが良くなり、

文意をとらえやすくなった、と感じていただけるでしょうか。

 

【2】「社員研修の~」で始まる文章の後半

全体に、モタモタした印象――。

主な原因は、

「~することにより、~することができます」と、

同じフレーズが不用意に繰り返されていることです。

 

この種の繰り返しは、文章のスピード感を損なう原因。

読み手はメッセージを受け取りづらくなります。

 

「企業価値を向上することができます」は、

 ↓

「企業価値を向上させることができます」

「企業価値の向上につながります」

などへの修整が必要ですね。

 

【Before】

社員研修の教材や昇進昇格試験として活用することにより、

社員の能力を高め、企業価値を向上することができます。

【After】

研修教材や昇進昇格試験の問題として活用すると、

社員の能力開発、企業価値向上の一助となります。

 

・懸案の「~することにより、~することができます」を解消。

・「能力を高め~企業価値を向上することができる」は、

 「~の一助となる」という表現にとどめました。

 考えてみれば、

 社員の能力を高め、企業価値を向上させ得る明らかな“根拠”は、

 示されているとは言えないのです。

 

では、2つの文を合わせて眺めてみましょう――。

 

【Before】

ビジネスに関する知識を知恵に活用する

「ビジネス知力」を測る日経TEST。

社員研修の教材や昇進昇格試験として活用することにより、

社員の能力を高め、企業価値を向上することができます。

【After】

日経TESTは、

仕事についての知識を知恵として活用する力、

「ビジネス知力」を判定します。

研修教材や昇進昇格試験の問題として活用すると、

社員の能力開発、企業価値向上の一助となります。

日経TESTは、

仕事についての知識を知恵として活用する力、

「ビジネス知力」を判定。

研修教材や昇進昇格試験の問題として活用すると、

社員の能力開発、企業価値向上の一助となります。

 

・「判定します。」を「判定。」と体言止めに。

 最後の「なります」との重複感の解消を狙いました。

・「日経TESTは」の直後の読点、

 「ビジネス知力」の直前の読点など悩みは尽きませんが、

 これらは今後の課題に……。

 

【今後へのメモ】

実際に広告原稿を作成された方は、

「最大文字数」という制限の中で、文章を練られたことでしょう。

このブログでは文字数は考えず、

あくまでも内容本位で推敲案をひねり出しています。

 

その意味では、やや“後ろめたさ”も感じます(笑)

 

今後、この種のサンプルを取り上げる際には、

【Before】の文字数にそろえて【After】を提示する――。

というチャレンジも、考えてみたいと思います。

 

ちなみに、N経での仕事を卒業した後も、

新聞は愛読し続けています!

 

ありがとうございました。


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