推敲百話【31】「美味しくなりました」の巻

モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。

今回は、某レストランの入口で見かけた看板の登場です。

一見すると“突っ込み”を入れる余地がなさそうにも見えますが、

果たして違和感センサーは、どこに反応したのでしょう?

 

失礼ながら“勝手に”推敲いたします。
「素朴なお店」という印象は伝わってきますが……

トマトソースが

美味しくなりました

 

【推敲のポイント】

あなたのご友人が、

有名なお寿司屋さんに行ってきたとしましょう。

こんな会話が想定されます――。

 

あなた「ねえ、どうだった?」

お友達「やっぱりねぇ、すご~くおいしかった!」

あなた「えっ、どんなもの食べたの?」

お友達「とにかく食べたもの、全部おいしかった!!」

あなた「……」

 

どうやら、会話は途切れてしまったようです。

さて、なぜあなたは“絶句”したのでしょう……?

次の3つの中からその理由をお答えください!

 

1.勝ち誇ったような態度が気に入らなかったから

2.「おいしい」はその人の主観。そのまま相手には通じないから

3.二日酔いのアタマに響く大音量だったから

 

<正解発表>

(ドラムロール~♪)はい!正解は「2」ですね。

 

「おいしい」「悲しい」「きれい」「すごい」「かわいい」など――。

その人の主観に基づく表現は、

(アウンの呼吸が確立されている“ごく一部の”ご夫婦などを除き)

そのままでは相手に正しく伝わらないと考えるのが原則です。

 

オスマン・サンコンさん(視力6.0)が言う「遠くに見える」と、

主に首都のビル街などに棲息する我々が言う「遠くに見える」では、

同じ「遠くに~」と言いながら、

その意味するところはまったく違う可能性が高い!

という理屈です。

 

では、どうすればよいのでしょうか。

 

答えは驚くほどシンプル。

そう! 具体的に話す(書く)――です。

 

「食べたもの、全部おいしかった!!」ではなく、

こんな話し方をしたら、どうだったでしょう。

 

お友達「大間から直送されたホンマグロのお刺身、

    しょうゆの小皿にちょっと浸けただけで、

    脂がサッと広がるの。

    香りのいいワサビを乗せて口に運ぶと、

    舌の上でアッと言う間に溶けてしまう感じ……。

    すぐに深~い脂のうま味が押し寄せてきて、

    それでいて、ぜんぜんクドさはなくて――」

あなた「……」

 

――どうやら、違う意味で“絶句”してしまったようです。

 

このように具体的に話す(書く)と、

実は、相手のアタマの中に「絵が浮かぶ」のです。

 

私たちは、人の話を聞いたり読んだりするときには、

自分の過去の経験ファイルの中から、

似たような場面を想像し、絵を思い浮かべるのですね。

 

そのことによって、

話した人、書いた人が経験した出来事を「追体験」するわけです。

 

では、美味しくなったトマトソースは、

どのように「推敲」できるでしょうか――。

 

【Before】

トマトソースが

美味しくなりました

【After】

契約農家が育てた無農薬トマトを

半日煮込んだトマトソースです

 

いかがでしょう。

シュッとした元気なヘタのついたトマト、

煮込むための深いお鍋(ズンドウ)の絵が浮かびましたか?

 

トマトの甘酸っぱさや、

煮込んだ後のまろやかな味わいを、

少しでも想像できたら「具体化作戦」の成功です。

 

【今後へのメモ】

トマトソースが

美味しくなりました

 

というオリジナルを生かす道も、もちろんあります。

こちらには、文字数が少なく、

パッと目に入るというメリットがあります。

たとえば、

 

トマトソースが

美味しくなりました by イタリア帰りの料理長

 

いかがでしょう。

白いコックコートが目に浮かびましたか……?

 

こうして「主体」を明らかにしてあげれば、

「主観」も根拠を持つことができるわけです。

 

このレストラン、

今度、機会があれば伺ってみたいと思います。

(場所は川崎駅の近くです^^)

 

ありがとうございました。


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