推敲百話【36】「コピペで謝罪広告は危険!」の巻

モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。

久々(!)更新の今回は、

4/26の日経紙面から、とある「謝罪広告」の一部をご紹介します。

謝罪広告は、言うまでもなく企業の命運を左右しかねない重要な文書。

法務、広報はじめさまざまなセクションのチェックが

特に慎重に行われているハズなのですが――。

失礼ながら“勝手に”推敲いたします。
「誤用」とまでは言い切れませんが…

深く御礼申し上げます。

 

【推敲のポイント】

今年の1月、「割烹着の美談」が話題にのぼって以来、

「コピペ」という言葉がすっかり市民権を得た感がありますね。

今回の物件も、

どうやらその「コピペ」の弊害が強く疑われるものです。

 

まずは、例文のどこが不自然なのか――。

 

皆さんもお気づきのとおり、日本語の「感覚」として、

「深く~」といえば「お詫び」が、

「御礼申し上げる」のなら「厚く~」が、

それぞれ自然な言い回しです。

 

すなわち、

「深くお詫び申し上げます」

「厚く御礼申し上げます」

これらは、無数に存在する「決まり文句」のひとつですね。

 

以下はあくまでも個人的な推測ですが、

どこからか「深くお詫び申し上げます」をコピペで持ってきて、

不用意に「お詫び」→「御礼」に差し替え、

「深く御礼申し上げます」

という不自然なフレーズを誕生させてしまったのではないでしょうか。

 

コピペではなく白紙の状態から書き始めたのであれば、

「深く御礼」で、書かれた方が違和感を抱かれるのではないか?

と、思うのです。

 

【Before】

深く御礼申し上げます。

【After】

厚く御礼申し上げます。

 

ま、長く日本人をやっていると、

こっちの方が、より「しっくりくる」という感じですかね。

 

【今後へのメモ】

では、「深く御礼申し上げます」を「誤用」と言い切れるかどうか。

(一般的には「誤り」とするケースが多いようです)

これは、「誤用」とまでは言えないと“私は”思います。

 

たとえば、

「深く感謝申し上げます」は一般的に使われているフレーズですし、

「ご厚情に~」が前に来るケースを想定すれば、

「ご厚情に厚く御礼~」と言葉を重ねるより、

「ご厚情に深く御礼~」のほうが、むしろスッキリした印象です。

 

う~む。

 

幸か不幸か、日本語にはこうした決まり文句が多数存在します。

次の①~③を読むと、「なんかへん!」と感じられると思います。

いかがでしょうか?

 

①荒天のため、午後の飛行機が運休になった。

②部長には行きつけの病院がある。

③その高圧的な性格、何とかなりませんか?

 

チッチッチチチチ……

 

はい。回答例は以下のとおりです。

①運休→欠航

(空港の案内ボードでおなじみですね。バスや電車は運休です)

②行きつけ→かかりつけ

(行きつけは、飲み屋ですね!)

③性格→態度

(微妙ですが、高圧的~なら、態度のほうがしっくりきます)

 

これらは「正しい・誤り」というよりも、

「よりしっくりくる」あるいは、

「こうするのが普通」という慣習、もっと言えば伝統ですね。

 

慣習や伝統は、敵に回すと少々厄介(やっかい)。

口うるさい上司に、

「こういう言い方は、普通しないよね!」

などと、注意されたくないものです。

 

日頃から、

良質な新聞、良質な雑誌、良質なテレビ番組などに接しながら、

こうした「日本語フレーズ」を味方につけてしまいましょう!

 

最後までお読みいただき、ありがとう存じます。


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