モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。
今回は私鉄の車内で目についた文章について、
アレコレと考えてみます。
漢字変換すると、勝手に意味まで教えてくれる便利な世の中ですが、
ちょっと油断するとこんなコトにも……。
暖かいご支援
【推敲のポイント】
西武新宿線といえば、
19歳(未成年!)だった私が鷺ノ宮のアパートに住んで以来のお付き合い。
その後、紆余曲折を経て(?)
現在、再び沿線の西武柳沢にお世話になっているのですから、
よほど“ご縁”が深いのでしょう――。
その西武線に乗った際、西武鉄道の自社広告が目にとまりました。
さすがに混んだ車内で写真は撮れなかったのですが、
同社のHPを訪ねてみると、狙い通り(?)同じ文面を発見。
「暖かいご支援」
この表現に“違和感センサー”が反応した当欄ですが、
皆さんは、いかがでしょうか?
これ、日本語の中でも“ややこしい”もののひとつ。
同音異義語とも少し違う、いわば同音“類義”語とでもいうべきシロモノです。
MicrosoftのWordで「あたたかい」と叩いて2度変換すると、
ご存じのとおり、こんなウインドウが現われて……
![<標準辞書> 温かい [一般的]⇔冷たい 「温かいスープ、心が温かい、温かい家庭、懐が温かい」 暖かい [気象・気温]⇔寒い 「暖かい日、暖かい地方、暖かいセーター、暖かい色」](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=380x10000:format=jpg/path/sf5f2e87811478cda/image/i75ceca9b0990aeb7/version/1401031054/%E6%A8%99%E6%BA%96%E8%BE%9E%E6%9B%B8-%E6%B8%A9%E3%81%8B%E3%81%84-%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%9A%84-%E5%86%B7%E3%81%9F%E3%81%84-%E6%B8%A9%E3%81%8B%E3%81%84%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%97-%E5%BF%83%E3%81%8C%E6%B8%A9%E3%81%8B%E3%81%84-%E6%B8%A9%E3%81%8B%E3%81%84%E5%AE%B6%E5%BA%AD-%E6%87%90%E3%81%8C%E6%B8%A9%E3%81%8B%E3%81%84-%E6%9A%96%E3%81%8B%E3%81%84-%E6%B0%97%E8%B1%A1-%E6%B0%97%E6%B8%A9-%E5%AF%92%E3%81%84-%E6%9A%96%E3%81%8B%E3%81%84%E6%97%A5-%E6%9A%96%E3%81%8B%E3%81%84%E5%9C%B0%E6%96%B9-%E6%9A%96%E3%81%8B%E3%81%84%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC-%E6%9A%96%E3%81%8B%E3%81%84%E8%89%B2.jpg)
おおもとの出典は書かれていないのですが、上記の内容が表示されます。
(辞書を引かなくなるわけですね…)
さて、この使い分けを見る限り、
明らかに、
×暖かいご支援……反対語=寒い
↓
○温かいご支援……反対語=冷たい
メンタルなニュアンスを含む「あたたかさ」を表すときには、
やはり「温かい」がより一般的と考えるべきでしょう。
今回は案外“スンナリ”でしたね。
【Before】
暖かいご支援
↓
【After】
温かいご支援
――で、一件落着と、いきたいところですが、
それでは当欄としては、やや消化不良。
あらためて、この「標準辞書」なるものを眺めてみました。
すると、世界のMicrosoft社が提供する日本語辞書そのものを、
安易に鵜呑みにすべきではないことが判明したのです。
【今後へのメモ】
使用例のひとつ「懐が温かい」は、
「懐が暖かい」がどうやら一般的な表現。
反対語を比べてみると、
×懐が温かい……反対語=懐が冷たい
↓
○懐が暖かい……反対語=懐が寒い
「金回りのよい状態」を「懐が暖かい」。
「金欠ぎみな状態」を「懐が寂しい」あるいは「懐が寒い」とは言いますが、
「懐が冷たい」という言い方は、まず使われませんね。
いかがでしょう。
実は私自身も、今回のブログを書くまでは、気づいていませんでした。
気の利いた機能に見えることでも、
どうやら一度は“疑って”みる必要がありそうです!
最後までお読みいただき、ありがとう存じます。

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