推敲百話【38】「環境省が地球温暖化を“推進”する!?」の巻

モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。

今回は最近の「日経」(6月24日)で見かけた広告について

アレコレと考えてみます。

実はこれ、

「プロに任せるべきところは任せる」という仕事の基本を外してしまうと、

こんなに“悲惨”なことになる――というサンプル物件。

最後の行、「気候変動キャンペーン」に“違和感”はありませんか?

失礼ながら“勝手に”推敲いたします。
そもそも1行目から主語と述語がねじれまくっています(笑)

気候変動キャンペーン

 

【推敲のポイント】

この広告の文面を読んだ瞬間、

体が震えるほどの怒りがこみ上げてきました。

 

「いい加減にして~♪」(中森明菜さん風に)

すみません。古すぎですね(笑)

 

しかし、これはどう読んでもプロの書いたコピーではありません。

全体に「甘すぎ」で「ゆるすぎ」。

そもそも1行目から主語→述語の関係があやしいことにお気づきでしょう。

 

そして、それ以前のモンダイと言えるのが、

最後の行にある「気候変動キャンペーン」というフレーズ――。

完全にズレていて、あり得ない表現だと私は思います。

「気候変動(地球温暖化)」という1行目の文脈からも、

明らかにこれ(=気候変動)は解決すべき問題点。

いわばネガティブな要素、悪いこと、ですね。

 

つまり、ここで言う「気候変動」は、

「飲酒運転」

「セクハラ」

「麻薬乱用」

などと“横並び”の表現なのです。

 

では、

「飲酒運転キャンペーン」って言いますか?

「セクハラキャンペーン」って言いますか?

「麻薬乱用キャンペーン」って、言うわけがないですよね(笑)

 

これらは明らかに、

「飲酒運転“防止”キャンペーン」

「セクハラ“廃絶”キャンペーン」

「麻薬乱用“○○”キャンペーン」

などとなるべきものです。

 

つまり、

「気候変動キャンペーン」も本来ならば、

「気候変動“○○”キャンペーン」のように、

問題点を解決する方向を示す「○○」が入るべきだと思うのです。

 

このままでは「気候変動を“推進”するキャンペーン」と

誤解される可能性が高いとさえ思います。

石原大臣、いかがでしょうか?

 

【Before】

気候変動キャンペーン

【After】

気候変動“防止”キャンペーン

気候変動“対策”キャンペーン

低炭素社会“実現”キャンペーン

低炭素社会キャンペーン

 

これは想像ですが、

気候変動には「抗いようがない」との認識から、

あえて「防止」などの言葉を省いた――という経緯かもしれません。

しかし現状では、

「推進」と誤解されてしまう、明らかな問題が残ります。

 

「抗えない」のであれば、

逆に「低炭素社会キャンペーン」のほうがスッキリするようです。

 

【今後へのメモ】

おそらくこのネーミングをはじめ、5行にわたる文章全体は、

次のどちらかによって、

カタチになってしまったものではないかと推察します。

 

1.意思決定者(=幹部)のひと声で決まってしまった。

2.“腕に覚えのある”職員が手作りにこだわりすぎた。

 

「1」は風通しのよくない組織で起こりがちなパターン。

たいしたアイデアでもないのに、

幹部の主張がそのままカタチになってしまうケースです。

しかも、他の職員は異を唱えることができない雰囲気――。

もちろん、そうなると外部の提案など、簡単に通る状況ではありません。

こうした職場の雰囲気が制作物に反映されると、

この種のものが出来上がってしまうのです。

 

「2」は私自身、過去に何度も遭遇したパターン。

ビジュアルや文章のレイアウトなど、

器用に「切り貼り」できることを“歓び”に感じられるような方が、

少なからずいらっしゃるのですね。

人間的には、とても優秀で素晴らしい方々なのですが、

どうしても「出来る自分がつくるべき」という意識から離れられないのです。

途中までは根気強くお付き合いするプロも最後には、

「だったら、自分でやれよ!」(=心の叫びです。筆者註)

と、“堪忍袋の緒が切れて”しまう――というパターンです。

 

いずれにしても、

プロが途中で仕事を諦めてしまう(=心の中で)状況をつくるのは、

あまり得策ではない――と、私は思います。

「プロに任せるべきは任せる」「餅は餅屋」というのが、

この種の仕事では、大原則だと思うのですが……。

 

ちなみに、日経全国版にカラーで15段(全面)広告を打てば、

広告代理店Feeも含め、いったいどれくらいの費用になるでしょうか――。

この「残念な広告」が私たちの税金でつくられ、掲載されている現実。

時間のあるときに、環境省に質問してみたいと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとう存じます。

 

追伸

ネーミングについては、環境省に「質問メール」を入れてみました。

もしも回答があれば、このコーナーでご報告いたします!


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