モンダイな文章を推敲で解決する「勝手にビフォーアフター」。
今回は最近の「日経」(6月24日)で見かけた広告について
アレコレと考えてみます。
実はこれ、
「プロに任せるべきところは任せる」という仕事の基本を外してしまうと、
こんなに“悲惨”なことになる――というサンプル物件。
最後の行、「気候変動キャンペーン」に“違和感”はありませんか?
気候変動キャンペーン
【推敲のポイント】
この広告の文面を読んだ瞬間、
体が震えるほどの怒りがこみ上げてきました。
「いい加減にして~♪」(中森明菜さん風に)
すみません。古すぎですね(笑)
しかし、これはどう読んでもプロの書いたコピーではありません。
全体に「甘すぎ」で「ゆるすぎ」。
そもそも1行目から主語→述語の関係があやしいことにお気づきでしょう。
そして、それ以前のモンダイと言えるのが、
最後の行にある「気候変動キャンペーン」というフレーズ――。
完全にズレていて、あり得ない表現だと私は思います。
↓
「気候変動(地球温暖化)」という1行目の文脈からも、
明らかにこれ(=気候変動)は解決すべき問題点。
いわばネガティブな要素、悪いこと、ですね。
つまり、ここで言う「気候変動」は、
「飲酒運転」
「セクハラ」
「麻薬乱用」
などと“横並び”の表現なのです。
では、
「飲酒運転キャンペーン」って言いますか?
「セクハラキャンペーン」って言いますか?
「麻薬乱用キャンペーン」って、言うわけがないですよね(笑)
これらは明らかに、
「飲酒運転“防止”キャンペーン」
「セクハラ“廃絶”キャンペーン」
「麻薬乱用“○○”キャンペーン」
などとなるべきものです。
つまり、
「気候変動キャンペーン」も本来ならば、
「気候変動“○○”キャンペーン」のように、
問題点を解決する方向を示す「○○」が入るべきだと思うのです。
このままでは「気候変動を“推進”するキャンペーン」と
誤解される可能性が高いとさえ思います。
石原大臣、いかがでしょうか?
【Before】
気候変動キャンペーン
↓
【After】
気候変動“防止”キャンペーン
気候変動“対策”キャンペーン
低炭素社会“実現”キャンペーン
低炭素社会キャンペーン
これは想像ですが、
気候変動には「抗いようがない」との認識から、
あえて「防止」などの言葉を省いた――という経緯かもしれません。
しかし現状では、
「推進」と誤解されてしまう、明らかな問題が残ります。
「抗えない」のであれば、
逆に「低炭素社会キャンペーン」のほうがスッキリするようです。
【今後へのメモ】
おそらくこのネーミングをはじめ、5行にわたる文章全体は、
次のどちらかによって、
カタチになってしまったものではないかと推察します。
1.意思決定者(=幹部)のひと声で決まってしまった。
2.“腕に覚えのある”職員が手作りにこだわりすぎた。
「1」は風通しのよくない組織で起こりがちなパターン。
たいしたアイデアでもないのに、
幹部の主張がそのままカタチになってしまうケースです。
しかも、他の職員は異を唱えることができない雰囲気――。
もちろん、そうなると外部の提案など、簡単に通る状況ではありません。
こうした職場の雰囲気が制作物に反映されると、
この種のものが出来上がってしまうのです。
「2」は私自身、過去に何度も遭遇したパターン。
ビジュアルや文章のレイアウトなど、
器用に「切り貼り」できることを“歓び”に感じられるような方が、
少なからずいらっしゃるのですね。
人間的には、とても優秀で素晴らしい方々なのですが、
どうしても「出来る自分がつくるべき」という意識から離れられないのです。
途中までは根気強くお付き合いするプロも最後には、
「だったら、自分でやれよ!」(=心の叫びです。筆者註)
と、“堪忍袋の緒が切れて”しまう――というパターンです。
いずれにしても、
プロが途中で仕事を諦めてしまう(=心の中で)状況をつくるのは、
あまり得策ではない――と、私は思います。
「プロに任せるべきは任せる」「餅は餅屋」というのが、
この種の仕事では、大原則だと思うのですが……。
ちなみに、日経全国版にカラーで15段(全面)広告を打てば、
広告代理店Feeも含め、いったいどれくらいの費用になるでしょうか――。
この「残念な広告」が私たちの税金でつくられ、掲載されている現実。
時間のあるときに、環境省に質問してみたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとう存じます。
追伸
ネーミングについては、環境省に「質問メール」を入れてみました。
もしも回答があれば、このコーナーでご報告いたします!

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