私事ながら、現在の購読紙は「東京新聞」「日本経済新聞」の2つ。
ご想像のとおり、2紙の“立ち位置”の違いは明確で、
エネルギー問題などをめぐる論調を比較しては、
“小さな幸せ”に浸っている――というわけです。
これまで日経の紙面からは何度か「推敲ネタ」をいただきましたが、
今回は東京新聞、10月18日の夕刊から。
写真の説明文(キャプション)に違和感センサーがピピッ!
ボランティアとともに捕獲した野良猫を見る上田宗孝町会長
【推敲のポイント】
「英語は契約書に向いている」
「契約書類は英語で書くべきだ」
こんなフレーズ、
皆さんも一度や二度は、耳にされたことがあるでしょう。
これらのフレーズは同時に、
「日本語は契約書類に向いていない」ことを意味しています。
ご存じのとおり、
日本語はいい意味でも悪い意味でも“ゆるい”言葉。
契約書よりも「与野党の“玉虫色”の合意文書」などにピッタリ!
というわけですね。
で、取り上げた文も、この“ゆるさ”の一例です。
「ボランティアとともに捕獲した野良猫を見る上田宗孝町会長」
との一文、冒頭の「ボランティアとともに」は、
1.ボランティアとともに→捕獲した
2.ボランティアとともに→見る
――の、2通りの解釈ができてしまいます。
写真の印象からは、どうやら「2」の説明をしたい様子。

……だとすれば、いくつかの方法が考えられそうです。
【Before】
ボランティアとともに捕獲した野良猫を見る上田宗孝町会長
↓
【After】
捕獲した野良猫をボランティアとともに見る上田宗孝町会長
→ごく単純に「語順」を入れ換えたもの。
「ボランティアとともに→見る」に意味を限定してみました。
このほうが日本語としても“しっくり”くるようです。
ボランティアとともに、捕獲した野良猫を見る上田宗孝町会長
→読点「 、」による解決例。
同様に「ボランティアとともに→見る」に限定されます。
【今後へのメモ】
ちなみに、もうひとつのキャプション(写真説明文)、
「設置したエサが入った捕獲器(手前)に近づく野良猫」
も、十分にイエローカードですね(笑)

今度は「捕獲器」に2つの言葉が係っています。
1.設置した→捕獲器
2.エサが入った→捕獲器
この例のように、ひとつの言葉に複数の修飾語が係るカタチは、
“アタマが重い”印象で読みづらく、
修飾語が3つ以上ともなれば、とても「簡潔な文」とは言えません。
この場合は、わざわざ「設置した」と書かなくても、
十分に写真の説明になりそうです。
「設置していない捕獲器」が突如現れたらおかしいですよね!
「エサが入った捕獲器(手前)に近づく野良猫」
で、伝わると私は思いますが、いかがでしょうか――。
では、一匹でも多くの猫ちゃんが平和に暮らせるように祈りつつ、
またお目にかかりましょう!
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

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